
Ever Oasis
*Combination*Part3
「最近セルケ族の集落で倉庫代わりにしている建物の中から見つけてしまったのですよ、これを!
ふふふ、何だと思います?……大昔に住んで居たセルケ族が記した古文書です!」
パピルスと言う植物を使っているだろうその紙は、古くはあっても割と保存状態は良好に
保たれている。デンは首を傾げて、
「で、なんて書かれているの?」
「ばっちり長老に解読して貰って断片的には読めましたので。この文字が示す所は
セルケ族の間でかつて存在して居た伝説のお笑い芸……どつき漫才!」
「……マン、ザイ?」
初めて聞く単語にデンは緩く首を傾げるとそれは何だと言わんばかりに
視線で説明を求める。
ニィーっと口元を上に持ち上げ満面の笑みを見せてザックがこれ見よがしに
嬉しそうに説明を始めるのだ。
「漫才と言うのは二人一組になって滑稽な掛け合いをしつつ見る人を楽しませる話芸です。
その中でも失われた芸「どつき漫才」はデンジャラスで難易度が高いながらも
娯楽の分野では類を見ない程周囲を笑いで染め上げるのです!」
「……はぁ。」
「具体的はボケ役と突っ込み役が居てですね。ボケたら背中のハンマーで
ごつーーん!と相方の頭や背中を叩き……」
「えぇっ!何だって!?」
デンがその言葉を聞いて垂直に飛び上がった。今ハンマーでぶっ叩くと
言わなかったか?もしかして漫才の相方になったらボクも叩かれる……?
デンは顔を青ざめさせてぶるぶると首を横に振った。
「そんな事をされたらボク死んじゃうよー、相方の件はお断りさせて貰うね。」
「……とても残念です。良いコンビになると思ったんですけどね。やはりタネビトのアナタには
荷が重すぎましたか。」
明らかに落胆した様子のザックを見てデンは断って悪かったかな?と思いつつ
何かを閃く。
「漫才は出来ないけどさ、僕とキミとで相互サポーターになるのはどう?」
「何ですか?それは。」
「キミは、お笑いをやるんでしょ?ボクはクレープ屋をやっている。
だからお互いがお互いを引立て合うように一緒にサポートし合いっこして
お互いの得意なコトを盛り上げるんだ!」
「な、なるほど……じゃあ次のフェスが開かれた時にそれを実践してみましょうか、
ご提案有難うございます、デンさん」
「今から軽く打ち合わせしておいた方がいいかも。とりあえず今日はハナミセは店じまいっと。」
長く話し込んでいた事ですっかりお店の接客が疎かになっていたが
『閉店』の看板を表に出して、その後一人と一匹は奥の部屋に引っこみ
顔を突き合わせて話し合っていた。