
Ever Oasis
*Combination*Part4
更に、五日の日数が過ぎ皆が待ちに待ったグルメフェスがオアシスで開催された!
ぱぱぱぱん!と勢い良く合図の花火玉が打ち上げられ綺麗にデコレーションされた
入口の門が開き、一匹また一匹とそれを潜って来訪客がやって来る。
グルメ好きのセルケ族をメインとしてペンクロウ達と言う顔ぶれだ。
新区画の一番目立つ箇所にあるのがデンのクレープ屋だが
そこに到達するまでの道の広間の小さなステージ風になった箇所にザックが
立って明るく声を張り上げていた!
「ようこそ、いらっしゃいました。お客様方。私は皆さんに笑いと癒しを
提供する愉快な下僕ザックと申します。この度は遠路遥々お越しくださり
感謝感激雨あられ!零れる涙を小脇に抱えましてはこう千切っては投げ。
千切っては投げ。回収するのも大変に御座います。
いやいや、前口上はのこの際抜き!
先ずはこの割引きチケットをお受け取り下さい。
これはハナミセ『クレープ屋』で十五パーセントの割引をしてくれると
言う素敵なチケットですぞ!
そしてクレープを買って戻って来たら私めの話を楽しく聞いてくだされば
これ幸い!もう少し時間が経ちましたら第一回目の演目を
始めたいと思います。」
大きくて野太い声は、新区画の端にまで響きたちまちに人々が集まって来る。
それをハナミセの窓から見ながらデンは、こちらも負けてはいられないと
ばかりに気合いを入れた!
「いらっしゃいませ、特上クレープを沢山用意してあるよ。お勧めは
このプレーンクレープ!お値段手ごろで、飽きの来ない素朴な味付け。
あのお笑い芸人のザックさんも太鼓判を押す程の美味しさだよ。
ちなみに彼は一人で四十個食べたからね。」
クレープを陳列していた棚に何故か
『あのザックさんが四十個平らげた伝説のクレープ!』
と言う看板が置かれていた。
わいわいと詰めかけた客が、プレーンレープを始めとする
各種のクレープを見て目を輝かせる。
開店をしてから飛ぶように売れていくクレープ。
表ではザックの愉快な話芸が繰り広げられている。
割引チケットを貰って、何時もより割安でクレープが買えるお客は
とても喜び、また面白い話を聞く事で自然に笑顔になり
今回のグルメフェスは大いに盛り上がった。
各ハナミセを巡り、様子を見に来ていたオアシスの長トトも
客足の多さに吃驚した様を見せつつも
ザックの笑い話を聞いて弾けるように笑っていた。
やがて夕刻となり目出度くグルメフェスは終了時刻となった。
汗だくになってデンのハナミセに寄ったザックはやり遂げた、と言う
満足感を全身で表していた。
一方のデンも、店仕舞いをする為の準備に
取りかかっている。
表に『品切れ中に付き閉店』との看板を設置すると店内は
一人と一匹だけとなった。
「お疲れ様、炎天下の中頑張って居たねぇ。キミがチケットを配って
宣伝してくれたおかげでクレープの売れ行きが吃驚するぐらい
良かったよ。ボクもしっかりザックさんの事をアピールして置いたからね。
はい、これ!」
簡易テーブルの上まで運んできたお皿に乗った大きな大きなクレープを
ザックに勧めながらにこやかにそう話す。
大人の腕程もありそうな巨大クレープを前にして、
ザックはとても喜んで早速それを掴み上げると大きな口を開けて
単眼を笑みの形にしながらかぶりつく!
「こちらも沢山の人に笑いを届ける事が出来ました。それにしても
このフルーツ入りクレープは最高ですね。空っぽの胃袋に染み渡りますよ、
今日はどうもお疲れ様でした。いやぁ、やはり漫才の相方にはなっては頂けないですかね?」
「それは遠慮しておくよ……だって叩かれると痛いからさ。
でもさ、ボク達これからも良いコンビで頑張ろうよ。」
「ハハハ、そうですね。とりあえずクレープの御代わりを貰えますかな?」
見ると、大皿は何時の間にかすっかり空になっていた。その食べっぷりに気を良くした
デンは楽し気に笑うとハナミセの奥に向かい
専用の厨房で新しいクレープを焼き始めるのだった。
夜になり、星明りの元で新区画のクレープ屋だけが
明かりが灯っている。と同時に香ばしいクレープ生地の焼ける香りが
周囲にふわり、と広がっているのだった。
~終わり~