
Ever Oasis
*闘技大会*Part1
「うわっ、ここは狭いなー!」
砂鼠の穴ぐらと呼ばれる小規模の迷宮。
入口は狭かったが、中に入ると天然の通路のようになっていて更に狭い。
横を見るとぽっかり空いた壁の穴から細かい砂がサラサラと零れ落ちている。
今日は、オアシスの長テテ(女主人公)とリコス族のサラームと言う
青年がここに宝を求めてやって来た。
サラームの手には古びた地図。
油断無く周囲に目を配りながら一路、地図に大きく×と書かれた地点へと
移動して行く。
リコス族は、この大砂漠に住む戦闘種族の一種で
ウア族が槍を捌く技を得意とし、セルケ族がパワーを偏重した
戦いを繰り広げるのに対し、彼らリコス族は敏捷性を身上としていた。
腰に下げた二振りの剣をすらりと抜けば目にも留まらぬ速さで
一気に三連撃、四連撃とコンボを繋げて行く。
また回避能力が高いので、滅多な事ではモンスターの攻撃が
直撃しない。
外見は兎のような可愛らしいふわふわとした長い耳を持ち
体表は柔らかい毛皮に覆われている。
尻尾はくるん、と巻いたリスのようなそれ。
しかしその見た目の可愛らしさから侮っていると
たちまちに物を盗まれて遠くへ逃げ去られてしまうだろう。
彼らには、生まれつき盗賊の才能もあるのだから。
「お宝って何だろうね!楽しみだね、テテさん!」
「うん!」
明るく朗らかな様子のサラームが先陣を切って横穴へと移動して行く。
その後をテテが、付いて歩いて行く。
目の前の穴には、巨大な蜘蛛の巣が張り下手に触るとネバネバと手に絡み付き
身動きが取れなくなるだろう。
しかし、サラームは任せて!とばかりに双剣を鞘から引き抜くと
ババババっとそれを縦横に振り蜘蛛の巣を払って行く。
何時もながらに見事な手際だ。
その横穴は奥に行くにつれて、どんどん狭く細くなって行き
また蜘蛛の巣が何か所にも張り巡らされおりその都度、サラームが
剣で素早く取り除いて行く。
そして人がやっと立てるだけの広さの地点まで来るとそれ以上は進めなくなった。
前方は行き止まりだが、壁に如何にも腕が入ります、と言う穴が穿たれ
その先にどうやら目的の物があるらしかった。
罠が仕掛けられていると考えもせずにサラームが何気なく腕を突っ込み中を探る!
指をもぞもぞと動かすと、袋のような物に当たりそれを素早く掴むと
腕をさっと引き戻した。
「ハハハ、こう言う時ってさ。大体のお話の中では欲をかいて穴の中のお宝を
ひっ掴むと腕が抜けなくなるんだよな。でもご覧のとおり、そんな事は無かったぜ!」
サラームは、自慢そうにそう言うとテテに見せる為に少し上に戦利品の袋を掲げて見せた。
袋は極めて小さい物で手の平の中にすっぽり収まる程の大きさ。
そしてとても重量が軽い。
「早速中を開けてみましょう。」
「ああ、何だろう。楽しみだな!ボクわくわくして来た。」
とりあえず元の通路へと戻る事にして、そこで袋を開けて見た。
中には……ぎっしり詰まった何かの植物の種。
ぱぁっ!と顔を輝かせるテテに対し、サラームは明らかに落胆したように
がっくり肩を落とした。
「何だ~、ただの種じゃんか。ボクはてっきり古代の宝石細工とか……
この軽さからして無いか。」
「それ、貸してみて。」
テテは大切そうに、袋を受け取るとそれを開け中の種の香りを嗅いでみた。
ちょっと埃っぽいような気はするけれど、
麦に近いようなその匂いは
何だかロマンを感じさせる物だ。
「早速オアシスの菜園に植えて見るわね。楽しみ!
そう言えば……」
「ん?」