
Ever Oasis
*姉妹* Part2
「ではこれとそれと、あれを貰うわね~?」
ヘロデアは存分に吟味したひざ掛けを3つ選ぶと値札に書いてある代金を
支払い、セシェンはそれを受け取り確かに、と頷く。
この世界にはお金の概念はあってもそれは硬貨や紙幣では無い。
「アクアジェム」と呼ばれる特殊な宝石が、一般的に用いられているのだ。
アクアジェムはその名前の通り水を閉じ込めた宝石で、
触るとヒンヤリと冷たく、また砕くと飲み水や生活用水等に使える水が中から
零れ出るのだ。
ふと見ればセシェンの居る側に置いてある代金を入れてある箱は、既に多くのアクアジェムで
一杯になって居た。
「ふふ~ふふふふ~♪」
ヘロデアは自分が選んだ濃い紫のと、爽やかな水色とやまぶき色のひざ掛けを
大事そうに畳んで背負い袋の中に入れた。
まだ日は高く、大通りには他にもお洒落品を扱うハナミセはある。
店の前まで出て来ると、ぎゅうぎゅうと押し合いへし合いでペンクロウ達が
道を歩いている。可愛らしく店回りに掲げられた特製の旗が涼し気に風に
なびいて居た。
ひざ掛け屋の隣には、日傘屋。そしてその2つ隣にはマント、ショールのお店が
並びいずれも普段の数倍のお客が入っているようだ。
どのお店も商品の在庫が尽きる頃、やがて夕方が来て終了時刻が近づいて来た。
ピィ、ピィと鳥のように鳴きながらペンクロウ達は満足そうにオアシス内のホテルへと
入って行く。ホテルの前には『ペンクロウ様専用ホテル』と書かれ
とても簡素な造りながら旅行客が気持ちよく過ごせる施設等が中にあるのだ。
ヘロデアは、一泊する事もせずそのまま大門を潜り砂漠へと出てウア族の集落まで
帰る事にする。来た時よりも背負い袋は大きく膨らみ戦利品がかなりの重さとなって居たが
そんな事より早く自宅に戻ってそれらを身に着けてみたくてうずうずとしていた。
フェスが終わり数日後、真実の剣を携えてオアシスの長トトは光の聖域と言う場所に
向かうべく準備をして居た。
かつて在ったオアシスの長達。彼らの祈りが籠った三色のクォーツに真の光を取り戻す為に
トトは行く。そして光の聖域付近で行方不明の妹を見かけたと言う情報を
元にウア族のミウがどうしても、と同行を願い出て来た。
トトがそれを断る筈も無く一人と一匹はアクアゲートを使って光の聖域の直ぐ近くの場所まで
一気に移動しそこから徒歩で聖域まで辿り着き閉ざされた門の封印を解き扉を開ける。
中には山程のカオスモンスターと数々の仕掛けだ。
「この仕掛けは……かなり厄介だ。」
トトは、周囲を見回しギミックを視界に入れる。
前方には鳥を模した赤いオブジェクト二つ。経験則上、それに風魔法を当てれば
何らかの仕掛けが解かれ先へ進める道が現れるのだろうが……
問題は距離が離れた二か所のオブジェクトを同時に作動させた状態にしなければならない事だ。
風魔法は、タネビトの長であり大樹の子と呼ばれるトトしか現状では使えない。
風を当てる事でクルクルと一定時間オブジェクトの羽が回る、その間に素早く
移動してもう一つのオブジェクトの前に辿り着き風を巻き起こした。
ガタン、と音がして背後の床が動き上へとせり上がって来た。
それにミウが飛び乗り地面のトトへと手を伸ばす。
上手くその手に掴まったトトも動く床に乗り上へと運ばれて行く。
床が上へと上り切った所に扉が見えた。床を蹴って一気に二人は扉前へ行くと
がちゃん!とためらい無くその扉を開ける。
その先に待っていたのは……