
Ever Oasis
*Combination*Part1
最果ての崖道と呼ばれる迷宮の通路で、
トトとセルケ族の青年ザックが揃って採取をして居た。
その場にしゃがみこんで、地面から生えている大きな
サボテンの果肉の下の部位を裂いている。
ここで取れるサボテンからは希少な綿が取れるのだ。
その綿は、柔らかく手触りが非常に良くそれを用いた布工芸に最適なのだ。
沢山取り過ぎると、生態系が失われてしまうので
数日或いは一週間に一度に少しずつしか採れ無い貴重な物だ。
「ふぅ、これぐらいかな。」
トトは、少量ではあるが良質のサボテン綿を携帯している袋に
丁寧にしまい込むと、ザックに声を掛け別の採取場所に移動する事にした。
ザックは、セルケ族と呼ばれる戦闘を得意とする種族、「ケモビト」で
外見は頭に大きなサソリのような形の物体が付着したゾウのような
横に太い体を持つ。
背中には体とほぼ同じぐらいのサイズの大きなトゲ付きハンマーを背負い、
いざ戦いになれば大きな岩をも砕くそのパワーで、
いとも容易くモンスターを叩き潰してしまう。
一人と一匹は、砂の上に足跡を残しながら歩く。
すると突然上から何かがどーーーんと降って来た!
「「わぁっ!?」」
トトは立ち位置のおかげで事無きを得たが、横を歩いていたザックの頭の上に
何かが勢い良くごちん!と当たり一回バウンドして地面に激突した!
良く見るとそれは、砂漠を股にかけて縦横無尽に商売をする行商人のお爺さんだ。
頭にぐるぐると大きく巻いたターバンごと、頭が地面の砂にめり込み足を
バタバタとさせて居る。
「何ですか、今頭の中に大きな火花が出ましたよ!……ハッ。これはまさか……」
ザックはそう言い、ぶつけられた頭をさすりながら目をぎょろぎょろと動かす。
そして地面に埋まった人物を視界に入れ確認する。トトはそれを覗きこみ、
「大丈夫かな?行商人さん。それとザックも……」
「まさかこれが伝説の落下芸と言う奴ですか、うぅむ新しいでは無いですか。
私達の意表を突き、上から全力でぶつかって来る事でベタな笑いを誘発し……今度私もやってみましょうかね。」
「ザック、今はそう言う問題じゃないと思うけど……早く助けなきゃ!」
呑気に考察するザックを促し、砂に頭が埋まっている事に
よりモゴモゴとくぐもった声しか出せない行商人の足を引っ張るようにして
助け出そうとする。右の足をトトが持ち、左の足をザックが持ち、いっせーのでまるで根菜を
抜くようにしてスポーン!と一気に引っ張り出した。
「わわわ、助かったぞい。……ぺっ、ぺっ!」
顔面に付いた砂を払い、口の中に入った砂を吐き出し、ターバンに詰まった
砂をザラザラと地面に溢しながら行商人が礼を言う。