
Ever Oasis
*愛の行方* Part3
それから、20日が経った。その間、トトは栽培畑で
見事な野菜や美しい花を収穫したり、砂漠へ仲間と素材を取りに行ったり、
ハナミセの売り上げ金を回収して行ったりと
つつが無く日常を過ごしていた。
一方のホスニーも変わらずスープ作りに精を出す毎日だった。
しかし、ふと……何時も当たり前のように受け取っていた
ハッサーンからの手紙がずっと途絶えている事に気が付き。
そして、そう言えばバハル丘陵に行って来てと言う
条件を自分が出した事を思い出していた。
(手紙が来ない顔も見せないと言う事は、……まさかね?)
本当にハッサーンは単身モンスター退治に行ってしまったのだろうか?
私に振り向いて欲しいから?
色々考えると何だかハッサーンの事が心配になってしまった。
だから今日は店じまいの看板を出して長老のトトの所へ行く事にする。
「あの、トトさん?」
トトは自宅に居て、窓際の観葉植物に水をやっていた。
振り向くトトに、ホスニーはこう頼むのだ。
「……前にハッサーンって居たでしょ?私が彼の私への気持ちを認める為の条件を出したんだけど戻って来て無いみたいなのよ。穴掘り洞まで
一緒に様子を見に行ってくれないかしら?」
トトは長老だからオアシスの住民達の願いは快く承諾するのだ。
嫌な顔一つもせず。今回も深く大きく頷くと、ニコッと笑って
手を差し伸べた。
トトとホスニーは旅支度を整え、次の日バハル丘陵に出立した。
バハル丘陵は、オアシスのあるカーラ砂漠からずっと離れた場所にある。
遺跡の跡地のような瓦礫の廃墟が幾つもそびえ、そして一面が見渡す限り砂漠に
覆われている。骨で出来た不気味な魚や、硬い殻と砂に覆われたクワガタの成虫のような
モンスターが住み付き砂漠を通る生物を襲っている。
モンスターは、凶悪だが彼ら自身は元は小さな一匹の生き物に過ぎない。
小さな鳥や虫、魚の化石や死骸等にカオスと呼ばれる邪悪な物体が付着し、巨大化した物が
一般的なこの世界のモンスターだ。だから彼らを倒すと、カオスが払われ元の生き物に戻り
自然に帰っていく。カオス、それはタネビト達の生活を脅かす悪しき存在である。
砂漠を渡っていく際、2人は手持ちの武器を使ってカオスモンスターを倒したり
時には時間短縮の為やり過ごしたりしながら歩いて行く。
昼前頃、丁度太陽が照り付け一番暑い時刻に2人は穴掘り洞まで着いた。
中は小規模の迷宮になっており、昼尚暗いそこでスズランの花のような形をした
丸く小さな魔法のランプを用いてそれを光源とし、進んだ。
途端に壁から砂がサラサラと流れる位置で突然、砂に混ざって何か巨大な物が
飛び出してきた!
アルマジロとハリネズミを足して二で割ったようなモンスター、トゲマジロだ!
ブルブルと体の砂を払い、獰猛な黒い目でこちらを睨み付けて来る。
「トトさん!」
「うん!」
トトは化石から削り出した岩の剣を持ち勢い良くトゲマジロの死角へと
回り込んで行く。
一方のホスニーも心得た物で、トゲマジロの注意をこちらへ引き付けておくべく
手に持ったボーラと呼ばれる魔法のブーメランを投げ、トゲマジロの眉間へと
的確に当てる!
「!?」
「あっ……」
その時2人は同時に暗がりに倒れている一人の人物を見た!
おそらくはハッサーンであろう事は簡単に想像がついた。
トゲマジロを連携プレーで倒すべく、息の合った動きで攻撃を加えて行くと
更に暗がりの砂の山が突然隆起し、見た事もないモンスターが突如出現した!
そのモンスターは、トゲマジロの亜種らしく銀色に光るびっちりと針状の突起が
付いた背中とトゲマジロの優に三倍はある巨体。シェルビーストと呼ばれるそれは
行き成り体を丸めて転がり、針でトト達を押しつぶそうと襲い掛かって来る。
と同時に、最初のトゲマジロにトドメを刺し二人は横に跳躍しながら、
シェルビーストの弱点を探る為暫く色んな角度から攻撃を仕掛けるのである。
カツン!と前方からの攻撃は、大きな腕でガードされて全く効かない。
比較的無防備な尻尾側に回り込んで、じわじわと切り刻むしか無い。
どれ程の時間、戦っていたのだろう。トトは、シェルビーストから受けた傷を
傷薬で治しながら、ホスニーの体を庇うように前へと出る!
モンスターの突進力は凄まじくマトモに食らっては、かなりの傷を負う。
しかし今まで似たようなモンスターと闘って来てその習性や行動パターンをある程度予測出来る
二人の敵では無く、
程無くモンスターの体に纏わりついていたカオスを追い払う事が出来た。
モンスターは、小さなアルマジロになって何処かへと逃げ去って行く。
「ふぅ……」
剣を鞘にすらりと納めると、トトはハッサーンの方へと駆け寄って行く。