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Ever Oasis

*愛の行方* Part2

三時間後。
再びからり、と表のドアが開いて
誰かが入ってくる。
そちらを見ると、オアシスの長である
トトの見知った姿が見えた。

「あら、トトさん。今日は何かしら?」

ホスニーは、瞼をぱちぱちと大きく瞬かせて
問いかける。
スープの材料を何時も納品に来てくれる
トトだが、今日は何やら様子が違う。
何時も通り通り納品に来てくれたと言う訳ではなさそうだった。

「ホスニー、実は表で行き倒れている人を
助けてね…その人を連れてきたんだ。」
「えっ?」

何故ここへ連れてきたのか分からない
と言う風に、訝し気な顔をしてホスニーが
声を上げる。

「その人、手紙を握り締めていたんで
悪いとは思ったけど気絶している間に
勝手に読ませてもらったんだ。
どうやらホスニーのファンと名乗る男みたいだよ。」
 「……。」
 「入ってもらっていいかい?」

ホスニーは、あの手紙の差出人と知って、複雑な面持ちを
しながら頷く。

「ええ、どうぞ。」

了承を得たので、トトは店の前に待たせてある人物を
中へと招き入れるのであった。

「じゃ、ボクは外で待っているから。
2人の話の邪魔しちゃ悪いし。」
「あっ、トトさん…!」


何故か身の危険を感じたホスニーはトトに
声を掛けるも、トトはさっさと店を出てしまう。
入れ替わりに入ってきたのは青の装束に身を包んだ
タネビトの青年。手には手紙を握り締めて、
少しふらふらとしながらもホスニーの前に
緊張した様子で立っていた。以前にも何度か店の対応をした時に
見知った顔ではあったがそれ程印象に残っていると言う訳でも無く。
要するに店の主人と客の関係。

「ホスニーさん!オレは、オレは…!」

「何時も手紙をくれるのは

アナタね。
ありがとうと言いたい所だけど、
はっきり言って迷惑なのよ。
私はスープ作り一筋なんだから
邪魔しないでくれるかしら?」

面と向かってそう言われれば
タネビト青年は、見る間にがっくりとうな垂れて行く……。

「そう、ですか……オレは迷惑だったのか。」
 「うん。」

容赦の無い一言に、青年は顔を下に向けては
落ち込んでいた。

「でも、そうね。その想いが本当だと言うなら……
バハル丘陵の穴掘り洞に居る
モンスターでも倒して来てよ。どうせ、そんな
力も勇気も無いでしょうけど。」


ホスニーが、戯れに出した条件は酷く残酷な物。
決して戦いに向いているとは言えないタネビトにとっては
それは正しく難しい試練とも言うべき物だった。
しかし、それを聞いて青年は途端にぴーんと
背筋を伸ばすと、

「ほ、本当に!?モンスターを退治したら
オレの気持ちを認めてくれるんだね!?」
「ええ、一応ね……。」
「よし、やるぞーーー!あ。これ今さっき書いた手紙だよ。
それとオレの名前はハッサーン。以後、お見知りおきを。」

希望が僅かでも見えた事で、饒舌になって
しまった青年、ハッサーンは
時間も惜しいとばかりに手紙を

手渡すと元気良く飛び出してしまった…。

その姿を見送ると、ホスニーは何事もなかったかのように
再び大きな鍋をかき混ぜ
綺麗なスープを作っていくのだ。

どうせ、口だけであんな事出来っこないと思いながら。

E-2: ようこそ!

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