
だんじょん商店会~伝説の剣始めました~
☆猫とサララ・後編☆
サララは、嬉しそうに頷き痩せ猫の親切に感謝しながら
一緒に連れ立って歩いていく。
路地裏の道を越えて家の塀を登り猫だけが
知っている道を歩いて行っている。
確かこの方角にはスカピンのアパートがあるはずだ。
「ここだ。どれどれ……。」
「……!!!」
研究者グループの一員スカピンのアパートは
何時も通り寂れていた。
閑散とした光景の中、アパートへと上がる階段のすぐ脇に
それはあった。
一枚の薄汚れたお皿。
その上に乗せられた しなびて硬そうな野菜の切れ端……
食べ終わった後の魚の骨……
パン粉らしき粉末……
痩せた猫は、それを見てやれやれと言う風に
肩をすくめてみせて
「このアパートの住人は酷く貧乏なんだ。
でも心は優しい人みたいなのである。
ま、ありがたく頂くとしようか。」
しかし痩せた猫は皿に顔を近づけてもすぐには食べようとしない。
サララの方をじっと見てこちらが先に食べるのを
待って居てくれているようだ。
勇気を出して、サララはその皿の中のご飯に口を付けた。
味が無い……スカスカのボリューム……
文句はあれど、今は何でもありがたい。
痩せた猫は、サララの食べっぷりを見て
満足そうに一つ頷くとこう言った。
「正直、我輩にとってここの飯は口に合わないんだ。
食べてくれて助かったよ。」
と。
ただの痩せ我慢かもしれなかったが
そう言ってくれてサララは嬉しかった。
尻尾をピンと立てて、それをゆらりと振りながら
感謝の気持ちを伝える。
その隣ではチョコが、恐る恐る皿の匂いを嗅いで
うげぇ~と顔をしかめそっぽを向いていた。
流石に猫も、食事を選ぶのだ。
と言うかむしろグルメなのだ。
簡素な食事の後サララとチョコは連れ立って、
スカピンのアパートから
出ようとする。
すると後ろから先ほどの痩せた猫が
「お嬢ちゃんは新入りかい?面白い話を一つしてあげよう。
今日の夕方に猫の集会が始まるのである。
場所はすぐそこだよ。我輩も行くつもりだ。」
チョコはその言葉を聞いて首を傾げる。
「この街で猫の集会なんてあったっけ?まぁいいや。
サララ後で行って見よう。」
『………。』
こくこくとサララは頷き、
その猫の集会とやらに興味深々の様子を示す。
が、夕方まではまだたっぷり時間があるのだ。
幸い今日は、晴天で涼しい風も吹いている。
そのままその場を離れて
街の広場が一望出来る屋根の上へと飛び上がると
サララとチョコはごろんと横に伸びて
日光浴を楽しむのだった。
『……。』
「猫ならではの贅沢、だって?サララって昔からだけど
ちゃっかりした性格をしてるよ。どんな境遇に放り込まれても
そこに面白さや楽しさを見つけ出す名人だね。」
チョコは、呆れ顔でそう言うがサララとこうして
屋根の上で一緒に過ごせる事を喜んでいるみたいだった。
青い空にぽっかりと浮かぶ雲。そして眼下には
人々のざわめき。
ここには平和な時間がある。
サララ達はぽかぽかとした陽気に誘われるように
まどろむのだった。
そして、ゴロゴロと猫らしく寝ている間に
時刻は夕刻となって居た。
「場所、何処だろ?さっきの痩せ猫は直ぐそこって言ってたけど。」
サララは、目ざとく色んな毛並や大きさの猫達が何匹も同じ方向へと
移動して居たのに気が付いたので
ちゃっかりそれに付いて行った。
取り残されそうになったチョコは、慌てて早足ので
後を追いかけて行く。
塀の上を通って、路地裏の奥の方まで行くとそこでは
数十匹の猫達が輪になって向かい合っていた。
「サララ、あれってさ。もしかして何かの商品じゃない?」
『……?』
猫達は口に咥えたアイテムを次々に目の前に置いて背筋をピン!と
伸ばし自慢そうに、他の猫を見て居た。
そこへ向こうから、自分の事を吾輩と呼んでいた痩せ猫がゆっくり
歩いて来る。
そしてサララ達の後姿を見ると、
「どうだ?この集会の目的は珍しいアイテムをゲットする事なのだ。」
猫達が持ちよったアイテムの中には明らかに猫に必要の無い物も
多数混ざっている。
サララはじーっと置かれているアイテムを見て居た。
本当に穴が開く程見つめてから、凄く欲しそうに「にゃあ!」と一声鳴いた。
「おっ、そこの雌猫ちゃん。お目が高いヨ。これは俺の飼い主が
大事にしてた『猫のぬいぐるみ』。ここでは物々交換で取引するんだぜ!」
物々交換、と聞いてサララの耳がしゅ~んと萎れた。
猫が好きそうな物なんて持っていないし、第一この姿では魔女の大釜に入って
既に集めたアイテムを取り出して来るなんて出来ない。
「ここでは、物々交換と言えば大体がカツブシの塊か、黄金のカツブシの塊を出すのが
決まりなのである。黄金のカツブシは、大体カツブシの3倍か4倍相当の価値があるのである。」
「ねぇ、サララ。あのぬいぐるみ欲しいの?」
「……。」
そわそわと落ち着きをなくしているサララにチョコが尋ねるも態度から
本当に欲しいのだと言うのを察すれば、
「僕があちこちに隠してあるカツブシを集めてくれば交換してもらえるかも。」
その瞬間、サララはチョコにすり寄って行ってこめかみや額を相手の顔に擦り付けるようして信愛の情を示す。
「サララ、あのねェ……。」
若干照れた風に後じさったがすぐに、カツブシ取って来るから待っててよ。と言い残し
チョコは行ってしまった。
ぽつんと残されたサララは隣に居た白猫に話しかけられるもニャアとしか答えられず
チョコ以外との意思疎通は難しそうだ。
やがて戻って来たチョコは、カツブシ4つを耳を揃えて先方へ
渡すと代わりに受け取った猫のぬいぐるみをサララの方へと前足でつついて
渡してあげた。
「にゃ、にゃあ~。」
とてもとても嬉しそうに鳴いたサララはしっかり口にぬいぐるみを咥えると
譲ってくれた猫や、世話してくれた猫に目配せをして
その後その場をとことこと離れて行く。
「僕を置いて行くな!とりあえず家に帰るのは分かったけど。」
「……♪」
やがて家に辿り着き、鍵が閉まっている店の屋根裏部屋の一番大きい窓から
また中へと上手く2匹は滑り込む。
サララは、自分の自室まで行くとテーブルの上に器用に登って
猫のぬいぐるみを上手く置いた。
時間は、結構経っており今は20時半の頃合い。
サララはころん!とソファの上で丸くなって寝る。
すると、次の日の朝になればいつの間にか人間の魔女である
サララの姿を取り戻したとか何とかで。
~END~