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大正もののけ異聞録

創作小説其の四 第二節
【真奈井四季と八雲編~神話~の巻】

「……!」
 
四季は、その言葉を聞いて何故か胸の中がじんわり暖かくなるような
不思議な気持ちがした。

 
(多々良様と、モノノケ達はずうっと私達『人』を守って居てくれた…。
まるで母のように…!)

 
と万感の想いが心を駆け巡る。
その後、ふと疑問に思った事を口にするのだ。

 
「その幽異界…と言うのはどんな場所なんですか?」

「さあ、詳しくは僕も分かりません。多々良様やモノノケ達の
故郷という事しか。
こことは別の世界、魂のみでも自由に行動する事が出来る世界だと
聞いています。」

「なるほど…!それはもしかして私達の世界で言う死後の…世界のような物でしょうか。」

 「そうかもしれないしそうではないかもしれません。誰も、その世界を見る事が出来ないですから
僕にも正しい答えは分からないんです。」

視線を多々良塚に向けると、ほわりほわりと
光の玉…モノノケの魂が
浮き沈みしながら塚に纏わりつくようにして
舞っている。
その様を見て四季は自然に両手を合わせて、祈りを捧げた。

 
(有難う御座います…!)

と。

そして懐から紙に包んだヨモギ大福をお供えとして取り出し、
石碑の前へと置く。
その時、ふわふわと舞っていた白い魂が不規則に揺らぎ瞬いた。
だがその現象は一瞬の事で、直ぐに光は規則正しい元の動きを見せるのだった。
お供えをする四季を見ながら

「四季さんはとても優しい方なんですね。人間でこの場所の本当の言い伝えを知る者は
少ないしそれに敬ったりする人も居ないですからきっとモノノケの魂は
貴女に感謝している事でしょう。」

そこでふと、言葉を止め多々良塚をじっと凝視する八雲。

「魂になっても尚この地に守護者として縛られているモノノケ達。
彼らは昇天出来るんでしょうか…。」

八雲のその言葉に、

「何時か、幽異界へと還れる日が…来るといいですね。
その日まで私は魂を慰める為にここに来ます。だから八雲君も
彼らに祈りを捧げに来てください。」

「分かりました。」

暫く、八雲も手を合わせて心の中で祈りの句を唱える。
清浄で静謐な時間はゆっくりと過ぎ行く。


その後、四季は八雲に別れを告げて、諏訪にある
自分の家へと戻って行った。
八雲もまた、血の契約者として再び四季と戦う運命にある事を知っていながらも
黙って踵を返し決意の表情で帰路につくのだった。

 
~終~



背景素材提供サイト:

フリー素材屋Hoshino様

http://www.s-hoshino.com/

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